概要
- 状況変化が激しい環境で、向き合うべき課題と方向性を適切に定め、素早く成長していくためには「技術の学び方を学ぶことへの投資や管理」が不可欠
- 経営管理手法の1つであるOKRを個人の目標管理に適用することはとても有意義
- 個人でOKRをやる上ではフィードバックのもらい方や振り返りを工夫しない限り効果が半減してしまう
Microsoft Ignite The Tour 2019 Tokyoでの登壇
12月5、6日に開催された東京でのMicrosoft Ignite The Tour 2019で個人OKRで加速させる技術力向上というタイトルで登壇しました。自分が45分間もOKRの話をするなんて夢にも思っておらず、後述する個人OKRにも含めているものでもなかったので依頼いただいたときには少し迷いました。しかし、つぎの理由から挑戦してみることにしました。
- 定期的に目標管理手法を見直し、改善していくことには価値がある
- キャリアの話と不可分で、需要がないこともなさそう
そろそろ文系卒、SIer営業から業務未経験で飛び込だエンジニアの5年後、の話できるな?😇
— かえる氏の闘争🐸😺 (@toshi0607) November 3, 2019
自由に資料公開できる雰囲気もないので、登壇をベースにまとめ直すことにしました。新年間近なこのタイミングでこの記事を書くことで、何かしら目標管理したい人の一助になれたらいいなぁと思っています。
OKRとは
OKRとは「会社内のあらゆる組織が、同じ重要な課題に全力で取り組むようにするための経営管理手法」です。
- O(Objective、目標)は「何を」達成するか
- 重要で、具体的で、行動を促し、人々を鼓舞するようなものです。
- KR(Key Results、主要な結果、成果指標)は目標を「どのように」達成するかモニタリングする基準
- 具体的で時間軸がはっきりしており測定・検証可能なものです。
採用企業
つぎのような企業で活用されています。
Intel、Google、AOL、Dropbox、LinkedIn、Oracle、Slack、Spotify、Twitter、Zynga、Anheuser-Busch InBev、BMW、Disney、Exxon Mobil、Samsung、freee、Mercari
OKRの設定例
まずIntelの例を見てみましょう。
- O
- 「8086」を業界最高性能の16ビットマイクロプロセッサ・ファミリーにする。以下をその尺度とする。
- KR(1980年第2四半期)
- 「8086」ファミリーの性能の優位性を示すベンチマークを5つ開発し公表する(アプリケーション)
- 「8086」ファミリーの全製品をリリースし直す(マーケ)
- 8MHz版の製造を開始する(技術、製造)
- 演算コアプロセッサのサンプルを遅くとも6月15日までに製作する(技術)
マイクロプロセッサ開発で競合がひしめく中、業界トップになるために全社一丸となって取り組んだ際のOKRです。KRには担当の部門が割り振られており、それが各部門のOになりさらにKRが設定される階層構造になっています。
もう1つはYouTubeの例です。
- O
- 以下を成長の推進力として(2016年末までに)1日あたりの総視聴時間10億時間を達成する
- KR
- 検索チームとメインアプリ(+X%)、リビングルーム(+X%)
- エンゲージメントと、ながら視聴を増やす(1日あたり総視聴をX時間にする)
- 「ユーチューブVRエクスペリエンス」を開発し、VRカタログの動画本数をXからYに増やす
KRすべてが達成されるとOが達成されるという構成です。
OKRの特徴
OKRを採用すると何がよいのかについては『Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR』に書いてあります。かいつまんで紹介します。
- 優先事項にフォーカスし、コミットする
- アラインメントと連携がチームワークを生む
- 進捗をトラッキングし、責任を明確にする
- 驚異的成果に向けてストレッチする
①優先事項にフォーカスし、コミットする
何より大事なのは集中すべき大事なことがはっきりするということです。これからの3ヶ月で一番重要なことは何か?という問いは重要でないことも同じように明確にします。
意思決定せずに、あれもこれも大事な状態で闇雲に手を動かすこともよしとしません。はっきりと選択することで修正もできます。意思決定をしない、あるいはすぐ決定を変えてしまうと何も学べません。リーダーは何が重要か選択することに時間とエネルギーを注がなければならないとされています。
②アラインメントと連携がチームワークを生む
透明性の高いOKRというシステム下ではCEOを含めた全員の目標がオープンに共有されます。それにより、個人は自らの目標を会社の戦略と結びつけ、他部門との補完関係を理解し連携できます。
トップから現場までのアラインメントによってすべてのコントリビューターが組織の成功と結びつくようになります。
③進捗をトラッキングし、責任を明確にする
OKRは定期的な確認、客観的評価、継続的再評価により実効性が高まります。
OKRの進捗を確認する中で、主要な目標の達成が危ぶまれる事態になれば、立て直すためのアクションを作成します。進捗確認も定量的に設定されたKRがある上で行えば、主観を排し責任を明確にすることができます。
④驚異的成果に向けてストレッチする
OKRを設定するときには60〜70%の達成率になるような野心的な目標を立てます。100%達成するコミット目標も設ける場合もあります。設定したOKRのうちどれが野心的目標で、どれがコミット目標であるかという位置付けを明確にします。
四半期が終わり達成状況を確認するとき、達成率が常に100%の場合は目標が低すぎるため設定レベルを見直します。
OKRは評価と直接的に結びつけないことで、失敗する可能性がある目標にチャレンジする文化を醸成します。評価にOKRの達成度をまったく含めないという意味ではありません。
OKRを支えるCFR
OKRはCFRとセットで運用することで実効性が高まります。前述の「③進捗をトラッキングし、責任を明確にする」でも触れました。
CFRとは年1回の勤務評定の限界から生まれた継続的パフォーマンス管理のことです。
- C(Conversation、対話)
- パフォーマンス向上を目的にマネージャーとコントリビューターの間で行われる意見交換
- F(Feedback、フィードバック)
- プロセスを評価し、将来の改善に繋げるための同僚とのコミュニケーション
- R(Recognition、承認)
*貢献への感謝
1on1ミーティング、360度評価、社内表彰制度、ピアボーナスなどもこの文脈に位置付けると目的がはっきりします。
OKRのプロセス
チームでOKRに取り組み、各個人まで降りていくスケジュールはつぎのようになります。
1月から新しいサイクルがスタートする場合、11月頃から目標設定の議論がはじまります。12月末には1年と四半期単位の目標が決め全社目標を共有します。そこから1月の半ばには各個人が設定し、2月には定期的なチェックが始まっています。
従来の管理手法との比較(参考)
KPIとMBO
- KPI(Key Performance Indicator)
- ビジネスに関係する把握すべき数値のうち、ここを注視して改善すればビジネスが成功するという指標
- チャーンレートやNRR(Net Retention Rate)など
- MBO(Management By Objective)
- ビジネスの成功のために何を目的とするか
- 部門の売上貢献、組織のオペレーション改善、チームの特定スキルの底上げなどを箇条書き
OKR運用失敗の3つの理由―、なぜ高すぎる目標が逆効果になるのかより
MBOとの比較
年次評価との比較
OKRを個人の目標管理に
僕は個人の目標管理にOKRを活用するようになりました。自分が置かれた状況に合う方法をいろいろと試した結果採用するに至ったため、置かれた状況と目標管理の変遷を合わせて紹介します。
2015年
状況
2014年、SIerで企画営業をしていた僕は(中略)海外でMBAをとって戦略系のコンサルに行くぞ!と思ったりしつつ、書き物が好きだったのでブログ書いたり、高校のときに情報の授業が異様に楽しかったりしたので週末にプログラミングを教えてもらったりして人生の模索をしていました。
その中で6月くらいに自分たちでサービスを作って、フィードバックを集めながらサービスをよくしていく体験にとても感動して、9月頃にはエンジニアになる気持ちでいました。そこから転職活動をはじめ、1社目は書類で落ち、2社目はやる気はすごいと思うけど育成コストが払えないと断られ、3社目に受けたfreeeでエンジニアとしての第一歩を踏み出すことになりました。上場本当におめでとうございます。
正社員ではなく、まず1ヶ月の業務委託からスタートということで生きるのに必死でした。2015年の1年の中で、Railsでサーバーを書くWebサービス単体のリリースからSeleniumを使った銀行明細取得エンジンの開発、WPFのWindowsデスクトップアプリ開発と色々なプラットフォームでの開発をしました。必死でした。
- 転「職」
- SIer企画営業からfreeeのソフトウェアエンジニアに
- 1ヶ月の業務委託 → 6ヶ月の業務委託 → 正社員
- プロジェクト
- 青色申告承認申請書送信サービス(Web)
- 銀行明細取得エンジン
- 銀行明細取得用Windowsアプリ
- 技術スタック
- Ruby on Rails、HTML、CSS、Selenium、C#、XAML、WPF
目標
2015年の1月にエンジニアになるにあたって掲げていたのはこれです。
「技術寄りでサービスを考え、作り、変え、大きくしていくことができるエンジニアになる」
1年や四半期ではなく、長期スパンの理想像ですね。何をやればそうなれるのか具体的なプランや、何をもってそうなった言えるのかの指標はありませんでした(わかりませんでした)。状況が状況なだけに、エンジニアとして働き続けられるようにひたすら目の前のことに取り組みました。
2015年も半ばになる頃にはつぎのような状態を目指していたようです。
- 目の前にある、必要とされることを何でもこなせる
- みんなが必要と思っている仕組みを一から(とは言わなくても「自分がやったった」って言えるくらいの貢献度で)作りたい
- 特定の分野と、逆に誰もやってないけど誰がやるといいやろう?みたいなときにアイツや!って声かけてもらえるようになりたい
2016年
2016年にはWindowsアプリ開発を中心にロールやプロジェクトが広がりました。Windowsアプリ経由で取得できる銀行明細の種類を増やすためのアーキテクチャの変更を行いつつ、Webからアプリを利用するまでのフロー全体の改善やサポートチームと協力して問い合わせ削減などをしていました。
UX改善は問い合わせ内容を分析した上でKPIを決めてメトリクスを取得、可視化、効果測定、分析して打ち手を考えることや、WebからシームレスにWindowsアプリを利用できるようにするためのWebフロント実装など、前年よりも必要な技術スタックが広がりました。
状況
- 開発 + プロダクトマネジメント
- 利用率、ダウンロード率などKPI設定
- サポートチームと協力し、問い合わせ内容調査
- プロジェクト
- Windowsアプリ利用のためのUX改善
- 銀行明細取得用Windowsアプリ対応行拡大
- 技術スタック
- Ruby on Rails、HTML、CSS、Backbone.js、CoffeeScript、C#、XAML、WPF、Embulk、Redush
目標
目標としては年初につぎのようなものを掲げていました。
- フロントに限らず、QAテスト的な文脈やいろんなプラットフォームで使えるクライアントアプリという文脈でJavaScriptと真剣に向き合いたい
- クライアントアプリ書いたよしみでAndroid触りたい
- APIを整備できる人になりたい
分野は前年比具体的になりましたが、曖昧で指標もありません。
ただ、半年後に考え直し、腰を据えてC#を学ぶことにしたようです。当時社内ではRubyを書く人が多かったことからC#を腰を据えて頑張るのに覚悟が必要でしたが、フォーカスすることで他の言語、プラットフォーム、プロジェクトにも活きる力を伸ばすという意図でした。
2017年
2017年はMicrosoft関連の技術を扱うチームというくくりでチームを作り、そのリードをがんばるという年でした。Windowsアプリは継続的に育てつつ、別のWindowsアプリのMac版の開発にXamarinを活用するプロジェクトにも挑戦しました。サーバーレスにも出会い、Windowsアプリのバックエンドの負荷対策の一環でAWS Lambdaも本番環境に導入したりしました。AWSのコンソールに入ったり、IAMで権限設定したり、クラウドサービスの設定を少しでもしたのはこのときが初めてだった気がします。
状況
- チームリード
- Microsoft Platformチーム
- 日本マイクロソフト様とのHackfest
- プロジェクト
- 銀行明細取得用Windowsアプリ対応行拡大
- サーバーサイド負荷対策でAWS Lambda(C#)
- 電子申告アプリMac版をXamarinで開発
- 技術スタック
- Ruby on Rails、HTML、CSS、Backbone.js、CoffeeScript、C#、XAML、WPF、Xamarin、VSTS、AWS Lambda
目標
目標はつぎのような感じでした。
- クエリ、データベース: 自分で早くKPIを追えるように、それが動く土台も詳しく
- 機械学習: 経営者が一歩先に進むための判断をサポートするという文脈かつ良いタイミングなので追いたいです
- 設計: 打ち手を増やして、サービスを作る、変える、大きくするを継続的によくするために。汎用的なデザインパターンとクライアントサイドの定石をまず身につけます。まだまだベストプラクティスを追うフェーズでよいと思っています。
- フロントエンド: ユーザさんが直接的に触る部分をよくするための技術、問題解決できるサービスであることを伝えるための手段として。サービスで使われてるメインの技術をまずは追えるように…C#(WPF)的な文脈ではもう少しXAMLを理解しようと思います。
- Linux: もう少しコマンド自由に使えるように…去年はLinux標準教科書を環境作って追ってみたら多少ましになったので、その復習プラスサーバの負荷状況調べれるようになりたいです。
- Git: 最低限もわかってない感があるので、本一通り見るのは最低限やります
- Xamarin: C#のコードが自分のスマホで動くのは純粋に楽しそう
- エディタ: RubyMineとVisual Studioもう少し使いこなそう
わからないと自覚できてきたことの羅列です。どのタイミングで何をがんばり、何をもってできたとするか基準が曖昧で何も管理できていません。
XAML、Xamarin、Visual Studio、機械学習(Azure ML)は業務との関連が深く、Microsoftプロダクトという共通性から結果的に集中的に取り組み、登壇や記事執筆を通じて結果的に多くの学びを得られました。しかし、土日は完全に消失しました。
2018年
状況
2018年はMicrosoft Platformチームから離れ、明細取得エンジンのマイクロサービス化に取り組みました。その中でGoに2週間ほど触れたことをきっかけにGopher道場に通い、「お金」に関して思うところもあったのでメルペイに転職しました。
メルペイではすべてが業務未経験技術スタックかつ担当マイクロサービスへの1人目のアサインだったため刺激が大きかったです。入社前のアサインの面談で、一番大変なところに配属してください!とお願いした通りでよかったです。
- 9月に転職
- すべて業務未経験の技術スタック
- テックリード
- プロジェクト
- 明細取得エンジンマイクロサービス化(前職)
- 精算マイクロサービス設計、開発
- 技術スタック
- Ruby on Rails、HTML、CSS、React(前職)
- Go、gRPC、GKE、Spanner、Terraform、CircleCI、Spinnaker、Datadog
目標
- 本: 2冊/年
- 登壇: 6回/年
- OSS: 1PR/月
- ひとまとまりのソースコード公開: 1リポジトリ/月
- 技術記事: 2記事/月
- 技術書: 30分/日
- その他本: 30分/日
- カラオケ: 2回/月、歌練習: 1回/週
- 品川健康センター: 2回/月、走る: 1回/週
できた・できなかったがはっきり判断できる習慣を目標にするようになりました。しかし、なんのための習慣かはよくわかりません。
副次的効果として、振り返りやすくなため3ヶ月に1度振り返り記事を書き、行動自体を頻繁に見直せるようになりました。
2019年
状況
2019年はメルペイ全体のサービスリリースと、新たに設計・実装したリリースといろいろリリースが続きました。定期的なリリースはいまだに手が震えます。
- マイクロサービスの設計、開発、運用
- サービスリリースし、運用開始
- プロジェクト
- 精算マイクロサービスリリース
- レポートマイクロサービス設計、開発、リリース
- 技術スタック
- Go、gRPC、GKE、Spanner、Terraform、CircleCI、Spinnaker、Datadog、Kubernetes、Pub/Sub、Dataflow
- 2020年から新たな挑戦が…!
目標
目標管理は習慣目標を継続しました。
- 本(執筆): 2冊/年
- CFP: 4ヶ月に1回プロポーザル出してみる
- OSS: 1PR/月
- ひとまとまりのソースコード公開: 1リポジトリ/月
- 技術書(読む): 30分/日
- その他本(読む): 30分/日
- ふぁーーーこれやーーーって本に出会いがっつり感想書く: 1回/3ヶ月
- ピアノ晒す: 1回/月
- 筋トレ: 1回/週
行動目標を継続することで目的は依然として不明瞭です。
行動に対する直接的なフィードバックが欲しかったため、プロポーザルが必要なカンファレンス登壇志向になりました。
重めの執筆や登壇が重なり、土日だけでなく平日朝・夜もいっぱいいっぱいに…『Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR』をそのタイミングで読んでいたこともあり個人の目標管理にもOKRを導入してみることにしました。
2019年7〜9月のOKRはつぎのように設定しました。
- O1
- DIY FaaSのためのKnativeのユースケース、動作の仕組みを理解する
- KR1
- どんな課題に対してどう使うのかを説明できる
- KR2
- Knativeを使ったプロダクトでどう利用されているか説明できる
- KR3
- Knativeの主要機能の実装方法を説明できる
- O2 嫁氏とゆったりした時間を過ごす
- KR1
- スパイダーマン観に行く
- バンブルビー観る
- KR2
- 花火大会に行く
『Measure What Matters』を読み、習慣目標はObjectiveなきKey Resultsの羅列であることや、目標管理とC(対話)F(フィードバック)R(承認)はセットだと気づきました。集中して身につけるべきことを絞り、家庭の時間も大事にすることにしました。
2019年10〜12月の振り返りと2020年1〜3月の目標設定記事は近日投稿予定です。
個人OKRをはじめてよかったこと
まだ取り組み始めてから2四半期で改善の余地はあると思うものの、取り組み始めてよかったなぁと思うことは多いです。
- 無限にある「やらないといけないと思っていたこと」から解放され、やるべきことに集中できるようになった
- 基本的に何でもやる自分に「やらない」や「断る」ための基準が生まれた
- 「これをやることで何を達成したいのか」を考えるようになった
- 3ヶ月という単位が何かを試すのに短すぎず長すぎずちょうど良い
- エンジニアとしての人生に進捗が生まれ始めた
1年単位でテーマを設定したり、より長期的なスパンでどうなって何を達成したいのかも考えておくと各四半期でOKRを決めるときの指針になりそうと感じています。企業のOKRも場当たり的に決めているわけではなく、ミッション、ビジョン、バリューがある上でその進捗や課題感に応じてつぎの3ヶ月の目標設定をするのが妥当なのと同じです。
ただ、それを考えあぐねて何も着手できないよりは3ヶ月単位でも明確な目標を定めて動くことが有益です。行動により長期的ビジョンがブラッシュアップされ、それを基につぎの目標が持て、長期的視野が育っていく場合もあるでしょう。
個人OKRのtips
個人でやる場合、企業でやるのと同じように制度的に強制され人の目がある中で取り組むわけではないので、多少工夫が必要に感じました。
OKR設定のベストプラクティス
まず、目標設定においてはSMARTの枠組みに従うとよさそうです。
- Specific(達成したいことの具体性)
- Measurable(指標の計測可能性)
- Attainable(ゴールの実現可能性)
- Relevant(自身との関連性)
- Time-bound(期限)
基本的に会社のOKR設定のベストプラクティス的なものはそのまま使えばよいです。本や記事もたくさん出ていて、特に良いものを最後に紹介します。
ただ、きれいなOKRを作るのが目的ではありません。自分が実現したいことに近づくのが一番大事なのでまずはやってみるとよいでしょう。
フィードバックの効果を高めるための工夫
個人でやる場合、制度的にフィードバックが保証されるわけではないので、人の関心が集まるオープンな場へアウトプットするのが重要です。
- 期限付きのアウトプットの場とKRをセットにする
- 技術書典、登壇、アドベントカレンダー
- プロポーザルが必要なカンファレンスに申し込む
- 聴く人、聴く人を代表する審査員の関心が高ければ通るし、最初からテーマがはっきりして関心のある人が聴きに来るのでフィードバックの精度が高い
- 会社のOKRに紐付ける
- サポートやフィードバックが得られる可能性が高い
振り返る習慣をつける
四半期の頭に立てたOKRを見直すのは次の四半期の頭ではありません。日々見直して軌道修正しながら取り組むことで実効性が高まります。
- 設定したOKRを毎日見る
- 毎朝SlackのReminderに通知させるなど
- KRに紐づくイベント単位で振り返りをアウトプットする
- Oの達成に近づけたのかどうか
- 関連性の高い別のKRの質も高められる
- 日々の活動を記録し、OKR関連のものとそうでないものの比率を見る
- 関連の薄いものは無くしたり効率化したりできないか
- 四半期最初の土日に振り返りと次のOKRを考える時間を確保する
個人OKRをはじめる
いいタイミングなのであなたも2020年1月〜3月のOKRを決めてみませんか?
Microsoft Ignite The Tour 2019 Tokyoでも5分各自がOKRを考える時間を設けました。
あなたのOKR
- Objective
- Key Result 1
- Key Result 2
- Key Result 3
OKRを深める
このセクションではオススメの本や記事を紹介します。
『Measure What Matters』
- ジョン・ドーア著、日本経済新聞社、2018年10月16日
- OKRがIntel、Google、ゲイツ財団などでどのように活用され、どのような成果が挙がったのかに関するケーススタディが収められた本
- OKRとそれを支えるCFR、文化などにも触れられたOKRを知るための決定版
- 参考資料にグーグルのOKR実践マニュアルが掲載されており、チェックシート的に使うだけでも価値がある
『OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法』
クリスティーナ・ウォドキー著、日経BP、2018年3月15日
OKRを採用して困難に立ち向かう架空のスタートアップの話の前半とOKRの設定と運営のノウハウが紹介された後半に分かれる
『Measure What Matters』よりコンパクトで、個人で取り組むときにはちょうどよい内容
OKRを設定する
- Google re:Workの1つ
- https://rework.withgoogle.com/jp/guides/set-goals-with-okrs
- OKRの概要、導入、評価まで網羅的かつ簡潔にまとめられている
- 超簡略版『Measure What Matters』
- 設定・評価用のシート付き
OKR運用失敗の3つの理由
- Coral Capital社
- https://coralcap.co/2019/11/three-reasons-okrs-backfire
- いざやってみると目標の高低などちょうどいいものを見つけるのは難しい
- Objectiveに垣間見る自分や成し遂げたいことの意義
いいキャリアとは
- 青田努(@AotaTsutomu)さん、いい感じにはたらくTips Advent Calendar 2019 1日目
- https://note.com/aotatsutomu/n/n3d783f60403e
- 主観の価値を、他人や社会は決めてくれません
- もし何も成し遂げられなくても、あとでふりかえった時に「それでも良かった」と言えるような日々
まとめ
- OKRはチャレンジングな目標設定と計測可能な指標から構成され、継続的パフォーマンス管理とセットで大きな成果達成を可能にする手法
- 個人でやるにあたってはSMARTの原則などベストプラクティスに沿ってOKRを設定し、アウトプットの工夫などでフィードバックをもらえる状況を作り、継続的にふりかえる
- 限りある時間の中で重要なことに集中し、公私共々大きな成果を挙げましょう!!
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